集積回路材料の技術進歩に伴い、電子機器の動作速度は飛躍的に向上しており、集積回路の高密度化、小型化、軽量化が進んでいます。このような変化により、高周波且つ高速なプリント基板が必要となり、設計上特性インピーダンス制御が益々重要になってきています。
インピーダンスとは何か
既知の周波数の交流電流を流した際の全抵抗のことを、インピーダンスといいます。プリント基板では、高周波信号の下での回路層(信号層)と、最も近い関連層(基準面)のインピーダンスの総和のことを指します。
インピーダンスの種類
1. 特性インピーダンス(Z0)
コンピューターや無線通信などの電子情報製品において、プリント基板の回路内で伝達されるエネルギーは、電圧と時間からなる矩形波信号(パルスと呼ばれる)です。この時に発生する抵抗値を、特性インピーダンスと呼びます。
2. 差動インピーダンス
極性が逆の2つの同一信号波形を駆動端に入力し、それぞれ2つの差動トレースで伝送し、受信端で2つの差動信号を減算します。差動インピーダンスは、2つのトレース間のインピーダンスのことです。
3. Oddモードインピーダンス
Oddモードインピーダンスとは、2つのトレースのうち、片方のトレースのグランドに対するインピーダンスを指します。2つのトレースのインピーダンスの値は、同じになります。
4. Evenモードインピーダンス
Evenモードインピーダンスとは、駆動端に同じ極性の信号波形を2つ入力し、2つのトレースを接続した際のインピーダンスのことをいいます。
5. コモンモードインピーダンス
コモンモードインピーダンスは、Oddモードインピーダンスと似ていますが、インピーダンスの値が大きいのが特徴です。
特性インピーダンス制御とは何か
回路板上では、導体で様々な信号の伝達が行われることになります。その伝送速度を上げるためには、周波数を高くしないといけません。しかし、トレースのエッチング?スタック厚?線幅など、様々な要因でインピーダンスの値が変化し、その結果として信号が歪んでしまうことがあるのです。そのため、高速回路基板上の導体のインピーダンスの値を一定の範囲に制御する必要があり、これを「特性インピーダンス制御」と呼んでいます。
特性インピーダンス制御が重要な理由
特性インピーダンス制御の要件は、回路板上の高速信号の整合性を確保するために提案されています。高速デジタルシステムの正常で安定した動作のためには、主要信号線の特性インピーダンス(Z0)を考慮することが重要な要素になります。伝送路のインピーダンスが整合していないと、信号の反射やはね返り、損失や本来の信号波形の変形(オーバーシュート、アンダーシュート、リンギング)などが起こり、回路の性能や機能に直接影響を与えてしまいます。
高速信号の場合、トレースは2点間を直接接続するような単純なものではありません。インピーダンス係数は、ある点から別の点へ信号が完全に送信されるのかどうかに影響するので、考慮しなければなりません。2点間のトレースが短ければ短いほど、信号の損失が少ないと思う方がいらっしゃるかもしれません。しかし、電子回路、特に高速信号ではマッチングが重要なのです。信号の伝送には時間がかかります。そのタイミングの違いにより、回路の性能に与える影響も違ってくるのです。インピーダンスがマッチングしていない場合、信号の伝送過程で非常に大きな歪みや減衰が発生し、最終製品の不安定さや伝送速度の低下や、最悪の場合製品が全く動作しないこともあり得るのです。
プリント基板の特性インピーダンス制御に影響を与える要因
トレース幅(W)
Z0はトレース幅が狭くなると急激に増加します。プリント基板試作時のトレース幅変更は、インピーダンス値の大きな変化につながります。そのため基板試作の工程では、トレース幅が許容誤差内で設計要求を満たさなければなりません。現在の高周波ラインや高速デジタルラインの信号伝送トレース幅は、0.10mmや0.13mmが主流となっています。通常のエレクトロニクス製品の場合、トレース幅の制御偏差は±20%です。しかし、Z0制御を行う信号伝送線路の場合、この時のZ0偏差は±10%を超えてしまい、要求を満たすことができなくなります。Z0を合わせるためには、トレース幅を厳密に制御する必要があります。
銅の厚み(T)
銅箔が薄いほどZ0値は高くなります。また、銅箔が薄いとZ0の制御に貢献する微細なトレースが作りやすくなります。なお、プリント基板の製造工程では、電気めっきを行う前にトレースの表面の残渣や、黒いトリミングオイルのない綺麗な状態にしておかなければいけません。そうでないと銅が正しくメッキされない可能性があり、トレースの厚みが変化してZ0値に影響を与えることになります。
絶縁材料の誘電率(εr)
Z0は絶縁材料のεrに反比例します。誘電体中の信号の伝送速度は、εrが大きくなると低下します。高い信号伝送速度を得るためには、材料のεrを小さくしなければなりません。一方で高い信号伝送速度を得るためにはZ0を高くする必要があり、そのためにはεrの小さい材料も必要となってきます。使用する樹脂材料に応じてεrも異なってきます。例えば、FR-4基板のεrは3.9~4.5、PTFEは2.2~3.9です。Z0値を制御するためには、それぞれの絶縁材料の選定を重要視する必要があります。
誘電体厚(H)
誘電体厚とは、トレース間の絶縁材料の厚みのことを指します。Z0に影響を与えるもう一つの大きな要因です。誘電体厚が厚いほど、インピーダンス値は大きくなります。基板を製造する前にトレース幅と材料の誘電率を決定するため、特に多層基板では製造時の積層厚(誘電体厚)の管理がZ0を制御する主な方法です。技術的な面においては、特性インピーダンス制御の厳しい高周波プリント基板では、絶縁材料の誘電体厚は10%を超えないよう厳しい公差を維持しなければなりません。
特性インピーダンス制御は、特に高速信号の要求に対して提案されるもので、プリント基板上の多くの要因に影響されます。設計の際には、専門的なインピーダンス計算ソフトのサポートにより、インピーダンスの種類、トレース幅、トレースの厚さ、ラミネート材、基板の厚さ、誘電体などの要因を考慮しないといけません。Z0が規定範囲を超えると、伝送される信号の反射や散逸、減衰、遅延などの問題に直面することになります。このため、メーカーは顧客の要求するインピーダンスマッチングを実現するために、基材を厳密に選択し製造工程をコントロールしなければなりません。
PCBgogoは、プロのプリント基板プロトタイプと部品実装サービスプロバイダーとして、インピーダンスの公差を±8%から-±10%の範囲で制御したFR-4プリント基板、フレキシブル基板、Rigid-flexプリント基板を製造することができます。お見逃しなく!
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